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最近クレアは苛立っていた。
理由はユートだ。
ユートがここ数日姿を現わさないのだ。
ユートはたとえ抜け出すときでも書き置きを置いて行った。
しかし、今回に限って書き置きがないのだ。
と、言う事は戻ってこないということだ。
(全く、恩も忘れて出て行くなんて・・・。なんて人なのかしら!)
そう考えていると玄関の方から母の声が聞こえた。
母はずっと「クレア、クレア!」と呼んでいる。
呼ばれてクレアは仕方なく玄関へ向かった。
玄関に行くとそこには酷く焦った様子の母と煌びやかな衣装を纏った男が居た。
その人物の周りにはたくさんの兵がいる。
クレアは彼を見たことがある。
本当だったらクレアは近づけないような人物だ。
だが、クレアは今、彼と話せる立場にあった。
何故って彼は“義妹の夫”なのだから。
「お久しぶりですね、お義姉さん」
彼、カノンの夫であるこの国の王子は答えた。
「リュート様、今日は一体何の用で?」
リュートが席に着いてしばらく経ってからクレアが聞いた。
そう聞くとリュートは少し真剣そうな顔をして言った。
「実は今日僕はある方の使者として来て居ます」
「そのお方とは?」
クレアが促す。
リュートは頷き答えた。
「僕の双子の兄であるリュークです」
そういえば彼には双子の兄がいるとは聞いた事がある。
しかし、社交的な弟とは違い、彼は人前に出る事がない。
だからクレアも存在は知っていてもどんな人なのかは知らないのだ。
そんな人物がクレアに何の用なのだろう。
「リューク様は一体何と・・・?」
そう聞くとリュートはその青い双眸をこちらに向け驚くべき事を言った。
「“私と結婚して欲しい”それが兄の言葉です」
その夜、ユートが帰ってきた。
帰ってきたと言っても部屋に行くと居たのだが。
「え?」
「いや今日なんか様子がおかしいから」
そう答えるとクレアはユートの目を見てボソッと呟いた。
「・・・貴方の目も青なのね」
「は?」
「いや、こっちの話」
そう言うとクレアは少し苦笑いをしながら話した。
「あのね、求婚されたの」
「ふーん」
「ふーんって酷いわね。こっちは悩んでいるのに」
そして、お互い黙った。
しばらく経ってクレアがユートに聞いた。
「ねえ、ユートはどうすればいいと思う?」
「は?」
「何か、どうすればいいのか分からなくて・・・。ユートは、どうすればいいと思う」
その問いにユートは答えた。
「結婚すればいんじゃね?」
「え?」
「だから、結婚すればいんじゃね?」
「な、何で?」
それにユートは先程と変わらない様子で答えた。
「だってよ、王子様だぜ?国一番の金持ちじゃねーか。お前の母さんもそれなら何も言わないと思うし、いんじゃね?
まあ俺には関係ないし。ただ、お前のためならそっちの方が幸せなんじゃねーの」
そう言われクレアは悲しそうに顔を歪めた。
だが直ぐに顔を上げユートに言った。
「私の幸せを勝手に決めないで!」
クレアは立ち上がり続けた。
「何よそれ!それが今まで世話をしてくれた人への言葉!?最悪!そこまで最低な人だとは思わなかった!」
そう言うとユートは目をパチクリさせている。
だが、クレアはそんなの関係無しだ。
「もういい!貴方なんかに聞いた私が馬鹿だったわ!もう出て行って!貴方なんか顔も見たくない!」
そこまで言って、クレアは部屋から出て行った。
一時間後、カノンが部屋に行くとユートはそこには居なかった。